こんにちは、地方公務員のリムクロです。
この記事では、地方公共団体のお金(財務財政・予算決算・会計・地方税・地方債)について、なるべく広範囲に必要最小限な情報をお届けします。
また、各項目における詳細の情報は、別途記事を作成しますので、深い情報を求める方は、そちらをご覧ください。作成次第リンクを貼り付けていきます。
地方公務員は、実務上地方公共団体のお金に接することがあっても、財務を担当しなければ、なかなか全体のお金を把握することはできません。
しかし、地方自治においてお金を理解するかどうかは重要であり、企画政策するためには絶対に知っておきたい知識であると言えます。
まずは、この記事を読むことで広く浅い知識を取得し、必要に応じて知識を深めていきましょう。
用語整理
用語の意味をわからずに理解することは難しいため、はじめに用語の整理をしておきます。
少しわかりにくい用語を一言でまとめてみましたので、ご確認ください。
例えば調定は、財務会計システム上に受け皿を作る行為だと思っている方が結構いますが、そうではなく、収入が適切であるかどうかを検査し、決定する行為のことを言います。
意外と勘違いしている用語や、一言で説明できない用語もあると思いますので、覚えておいて損は無いと思います。
ではここからは、用語整理に挙げたもののうち、重要なものを少しだけ解説していきます。
予算
予算については、歳入予算と歳出予算、当初予算と補正予算について簡単に解説しておきます。
歳入予算と歳出予算
予算とは、歳入と歳出の見積もりのことを言いますが、歳入予算と歳出予算では大きく意味が変わってみます。
歳入予算:単に歳入の見積もり
歳出予算:予算の範囲内での支出行為に関する権限を、首長に対して法的に付与する
歳入予算は、どのような収入がいくら入ってくるかの予想でしかありませんが、歳出予算は、どのような目的でいくら支出するのかを具体的に見積もり、議決されるため、法的に権限を付与されるため、支出の目的や金額に制限が生じます。
ただし、目的を異にする支出が全くできないと行政が滞ってしまいますので、ある程度予算の流用が認められています。
具体的には、予算科目は大きな区分から『款→項→目→節→細節』とありますが、目・節・細節については、予算流用に対する議決が不要とされています。
当初予算と補正予算
予算は、当初予算と補正予算に区分することができます。
当初予算:一会計年度を通じて必要な歳入歳出予算
補正予算:当初予算調製後に発生した自由に基づく追加予算
当初予算は、会計年度開始前に調製・議決するのに対して、補正予算は、会計年度開始後に調製・議決することができます。また、会計年度開始前であっても、補正が必要な場合は補正予算を組むことができます。
なお、補正予算は当初予算に溶け込む形となりますので、当初予算と補正予算を分けて執行する必要はなく、合計予算から支出することが可能です。
決算
決算とは、歳入と歳出の実績のことですが、議会での認定を要します。
ただし、議会に提出される決算は全て事後報告のため、違法又は不当な支出があったとしても、無効とはなりません。しかし、首長の責任が問われることは十分に考えられます。
また、決算は調製期限が設けられており、出納閉鎖後3か月以内(公営企業2か月以内)に首長に対して提出しなければなりません。この決算の提出は、会計管理者の権限の1つです。
首長は、会計管理者から提出のあった決算を監査委員の監査に付し、決算意見を求めます。
そして、決算意見を付けて議会の認定・議決を得た後、公表することで決算が完了します。
会計
会計とは、現金や物品の出納・保管等に関する事務のことですが、これらは会計年度ごとに区分して整理します。
会計年度とは、収入支出の計算期間で、4月1日から3月31日までのことを指しますが、公営企業における事業年度も同様です。
各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもってこれに充てることとされており、これを『会計年度独立の原則』と言います。
また、会計は原則単一で行われるべきものですが、特定の事業において、その歳入を歳出に充てているようなケースでは、条例によって会計を分けることが可能です。これを、特別会計と言います。
なお、各地方公共団体における会計は、現金の収支をベースとした『現金主義』が採られていますが、公営企業は財産等の増減の発生事実に基づいた『発生主義』が採られています。
出納
出納とは、現金の収入・支出作用のことであり、首長の命令に基づいて、会計管理者が行うこととされています。
ただし取引の実態としては、首長が指定する金融機関がこれを行っており、そういった金融機関のこと『指定金融機関』と言います。
なお、指定金融機関は、都道府県では必置であり、市町村では置ける規定です。
出納は、各会計年度終了後最初の5月31日をもって閉鎖されるため、それまでに整理を終える必要があります。
この、会計年度終了後から5月31日までの期間を『出納整理期間』と言います。6月1日以降は、出納を行うことはできません。
地方税
地方税とは、地方税法の定めに従って住民等から徴収する租税のことですが、次の2つの要件によって区分されています。
・使途が限定されているかどうか
・納付者と負担者が一致しているかどうか
使途が限定されていない税を普通税、されている税を目的税と言います。
また、納付者と負担者が一致している税を直接税、していない税を間接税と言います。
地方税は、都道府県と市町村で担当する租税が異なりますので、それぞれ何を担当するのかをご確認ください。なお、どの区分においても、各地方公共団体でオリジナルの税を設けることができますが、総務省の同意を要します。
都道府県税
都道府県が担当する地方税は、次のとおりです。
関連記事:【解説】都道府県税は全部で何種類?(普通税・目的税・直接税・間接税)
市町村税
市町村が担当する地方税は、次のとおりです。
関連記事:【解説】市町村税は全部で何種類?(普通税・目的税・直接税・間接税)
地方債
地方債とは、複数の会計年度にまたがる借入金のことであり、地方債は、借用書による証書借入れと、証券発行の2つの方法があります。
また、歳出は本来、歳入をもって充てる必要があるため、財源とできる経費が限定されています。
なお、都道府県又は指定都市が起債をしたり重大変更したりする場合は、総務省の同意を得る必要があります。また、市町村は同様の場合には、都道府県知事の同意を得る必要があります。
(感想)地方財務は非常に複雑
とりあえず、地方公共団体のお金について、必要最小限の解説が終わりました。広く浅く紹介したため、詳しい中身にはほとんど触れられていませんが、入り口としては十分な内容だと思います。
地方財務は非常に複雑であり、いくつもの法令を理解しなければ、正しい事務を行うことができません。学習ハードルが高く、なかなか学ぶ機会を作れない方も多いと思います。
しかし、これらの知識は重要なため、地方公務員.comの関連記事を読み進めれば、一通り理解できるような設計をしていきたいと思っていますので、今後にご期待いただければと存じます。