解説

【初心者向け】基礎法学をわかりやすく解説②(解釈・原理原則)

地方公務員は、多くの法律や条例規則を使いこなす必要がありますが、前提となる基礎法学を理解していない人がほとんどのように思えます。

基礎がわからないと応用が効かないのは法律の世界でも同じで、条文に書いてある文面の国語的理解ができても、本質的な法令理解ができず、正しい解釈に至っていないことが多いです。

このため地方公務員.comでは、法学初心者に向けた基礎法学に関する情報を発信し、法令を使いこなすためのお手伝いをしたいと考えております。

第2回目の本記事では、法の解釈・原理原則について解説していきますので、参考となれば幸いです。

第1回から読むなら:【初心者向け】基礎法学をわかりやすく解説①(効力・分類)

法の解釈

法の解釈とは、一般的・抽象的に書かれた法の意味を具体的に明らかにすることです。

法の条文を全て暗記したとしても、それだけではあまり役に立ちません。意味がわかって初めて法を使いこなせるようになるため、法の解釈を理解することは極めて重要であると言えます。

ここでは、法の解釈方法について簡単な解説を行っていきますので、一読いただければと思います。

文章解釈

条文の言葉と文章を忠実に捉える解釈方法です。

論理解釈

法を国語的(文法的)に解釈するだけでなく、法制定の沿革・意義・目的を重要視する解釈方法です。

論理解釈は、『反対解釈』『類推解釈』『勿論解釈』『縮小解釈』『拡大(拡張)解釈』『変更(補正)解釈』の6つに分類されています。

反対解釈

法に書いているものに限って適用し、書かれていないものは類似するものであっても適用しないとする解釈方法です。

例えば、未成年はこれを禁止すると書いていたら、成人は禁止されていないからOKだよねというものです。

なお、反対解釈と類推解釈は対義関係にあります。

類推解釈

法に書かれていない事項については、類似する事項について定めている法を適用する解釈方法です。

例えば、車馬通行止め(車と馬の通行禁止)と書かれていた場合に、ロバも馬とほとんど同じだから通行できないよねというものです。

刑罰法規においては、類推解釈は原則認められていません。

勿論解釈

勿論解釈とは、法制定の沿革・意義・目的を考えて、法に書かれていなくても、類似する事項と同様に適用することが当然であるとする解釈方法です。

例えば、過失の場合に適用される罰則があれば、故意や重過失の場合にも勿論適用されますよというものです。

縮小解釈

縮小解釈とは、法制定の沿革・意義・目的を考えて、広い意味の文言をそのままに適用することが妥当でない場合に、通常の意味よりも狭く捉える解釈方法です。

例えば、車馬通行止め(車と馬の通行禁止)と書かれていた場合に、自転車なら軽いから通行してもいいよねというものです。禁止する理由が重量であれば、考えられる解釈です。

拡大(拡張)解釈

拡大解釈とは、法制定の沿革・意義・目的を考えて、狭い意味の文言をそのままに適用することが妥当でない場合に、通常の意味よりも広く捉える解釈方法です。

例えば、車馬通行止め(車と馬の通行禁止)と書かれていた場合に、牛も重量の大きな動物だから通行できないよねというものです。禁止する理由が重量であれば、考えられる解釈です。

変更(補正)解釈

変更解釈とは、法の表現が間違っていて、内在する原理に反する表現が用いられている場合に、文言を変更して捉える解釈方法です。

法の基本原理・原則

基本原理・原則とは、根本となる仕組みや、当然に守らなければならないルールのことで、一番最初に学校教育で学習する基本原理は、憲法の基本原理でしょう。

ここでは、代表的な法として、憲法、民法(私法全般に及ぶ)、刑法について解説します。

憲法の基本原理

憲法の基本原理は『国民主権』『基本的人権の尊重』『平和主義』であり、三大原理(三大原則)と言われています。

憲法が最大限重要視しているのが、この三大原理です。『憲法違反ではないか?』とマスメディアで取り上げられるのは、この三大原理に関わる内容が多いように思えます。

民法(私法)の基本原則

民法の基本原則は、『権利能力平等の原則』『所有権絶対の原則』『私的自治の原則』です。

また、私的自治の原則からさらに『契約自由の原則』『過失責任の原則』が派生する形で捉えられています。

権利能力平等の原則とは、国籍・階級・職業・年齢・性別等によらず、誰もが平等に権利能力を持つとする原則のことです。

所有権絶対の原則とは、所有しているものを全面的に支配し、他者からの侵害を排除できる原則のことです。

私的自治の原則とは、私人間の法律関係(権利義務の関係成立等)に対して国が干渉してはならないとする原則のことです。

契約自由の原則とは、私人間の契約については、公の秩序や強行法規に反しない限り自由に行って良いとする原則のことです。(ここからさらに『相手方自由の原則』『内容自由の原則』『方法自由の原則』などが導き出されますが、ここでは省略します。)

過失責任の原則とは、相手方に何か損害を与えた場合に、過失がなければ損害賠償責任を負わないとする原則のことです。

刑法の基本原則

刑法の基本原則は、『罪刑法定主義』『行為主義』『責任主義』です。

罪刑法定主義とは、犯罪として刑罰を与えるためには、あらかじめ法によって具体的な内容を定めておかなければならないとする原則です。

行為主義とは、実際に行為に及んだ内容について処罰されるとする原則です。心の中でどんなに悪いことを考えていても、それが外にでなければ、処罰されることはありません。

責任主義とは、責任能力がなければ処罰されないとする原則です。刑法では、14歳未満の者は責任能力を否定しています。(刑法第41条)

基礎法学を身に付けて実務に役立てよう

本記事では、法令を正しく取扱うための前提知識として、基礎法学の一部を解説しました。

詳細を記憶する必要まではないと思いますが、法令と向き合う際には、ぜひ読み返していただけたらと思います。

また、わからないところがありましたら、応えられる範囲でお答えしますので、問合せフォームをご利用ください。

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