こんにちは、地方公務員のリムクロです。
本日は、地方公共団体のお金の1つである地方税のうち『都道府県税』についてわかりやすく解説していきます。
地方公共団体のお金全般に関しては『【解説】地方公共団体のお金(財務財政・予算決算・会計・地方税・地方債)』をご覧ください。
税金は、国税と地方税に大別することができ、地方税はさらに都道府県税と市町村税に分けることができます。
ただし、税金制度は地方自治法や地方税法のみならず、多くの法令にまたがり規定されているため、非常に複雑であり、『どの税金が市町村税?』『これは何のための税金?』などと疑問に思うことも多いはずです。
しかし、この記事を読むことにより、都道府県税に関する初歩的な知識を得ることができ、税収をある程度理解できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
また、市町村税については『【解説】市町村税は全部で何種類?(普通税・目的税・直接税・間接税)』をご覧ください。
都道府県税とは
地方税とは、地方税法の定めに従って住民等から徴収する租税のことです。
都道府県は、住民に対する行政サービスを提供するため、財源確保が必要となりますが、都道府県税はその基本であり、中心を担っています。
この都道府県税は、5つの自主課税権に基づいて課税運用されており、各都道府県において住民税の課税額が異なるのはこのためです。
都道府県税の区分
都道府県税は、次の2つの要件によって区分されています。
使途が限定されているかどうか
納付者と負担者が一致しているかどうか
普通税と目的税
都道府県税のうち、使途が限定されていないものを普通税、限定されているものを目的税と言います。
例えば水利地益税は、地方税法第703条において『水利に関する事業、都市計画法に基いて行う事業、林道に関する事業その他土地又は山林の利益となるべき事業の実施に要する費用に充てるため』と使途が掲げられています。
直接税と間接税
都道府県税のうち、納付者と負担者が一致するものを直接税、一致しないものを間接税と言います。
例えばゴルフ場利用税は、納付者はゴルフ場の経営者等ですが、負担者は利用者です。都道府県条例の定めるところにより、経営者等を特別徴収義務者に指定することで、利用者から税金を徴収します。
普通税は全10種類+@
都道府県における普通税は、①道府県民税②事業税③地方消費税④不動産取得税⑤都道府県たばこ税⑥ゴルフ場利用税⑦軽油取引税⑧自動車税⑨鉱区税⑩特例分固定資産税の全部で10種類規定されています。
なお、総務省と協議し同意を得ることで、各都道府県のオリジナル税を作ることも可能です。
(例:沖縄県の石油価格調整税)
道府県民税(直接税)
都道府県税は、毎年1月1日現在で各自治体に住所又は居所を置く個人、本店支店を置く法人等に課される税金のことです。
前年1月から12月末までの1年間の所得に応じて計算される所得割と、一律課される均等割の合計額が課税されます。
都道府県税は、直接税に分類されていますが、実際には給与支払者や公的年金支払い者が、毎月給与や年金から都道府県税を徴収し、市町村に納付する『特別徴収』が一般的です。
なお、市町村民税と都道府県税は、一括して市町村が徴収するため、2つの税を合わせて住民税と呼ばれています。
事業税(直接税)
事業税は、事業に課される税金であり、個人の事業に対して課すものを個人事業税、法人の事業に対して課すものを法人事業税と呼び分けています。
所得を課税標準として、税率を乗じることで税額を算出しますが、税率は、個人事業税であれば業種ごと、法人事業税であれば年間所得ごとに税率が区分されています。
なお、個人事業税には290万円の事業主控除があるため、所得が290万円以下の場合や、非課税事業に該当する場合は事業税は発生しません。
地方消費税(間接税)
地方消費税は、商品の売上やサービスの提供などに対して課される税金であり、誰もが日常的に納めている馴染み深い税金です。
一般に、消費税は国税と認識されている場合も多いですが、実際には、国と都道府県で分配しています。(消費税10%のうち 国7.8%、都道府県2.2%)
また、2.2%のうち、各都道府県において実際に消費等が行われた割合等を統計的に調査し、按分して各都道府県で清算します。さらに、清算後の地方消費税の半分は各市町村に分配されます。
なお、課税売上高(税抜)が1000万円以下の事業者は納税義務が免除されます。小さな駄菓子屋さんが消費税を掛けずに販売しているのは、このためです。
不動産取得税(間接税)
不動産取得税は、不動産の取得に対して課される税金であり、取得者が個人であるか法人であるかは問いません。
不動産とは、土地及び土地に定着している物のことを言います。土地に定着している物とは、建物・立木・石垣・車庫等が該当します。
不動産の適正な時価を課税標準として、その4%に当たる金額が納付税額です。なお、不動産の適正な時価は、市町村における固定資産課税台帳に登録されている価格と同額を用います。
都道府県たばこ税(間接税)
都道府県たばこ税は、次の場合に課される税金のことです。
卸売販売業者等が製造たばこを小売販売業者に売り渡す場合
卸売販売業者等が製造たばこにつき、消費者等に売渡しをし、又は消費等をする場合
小売販売業者に売り渡す場合は小売販売業者の営業所所在の都道府県において課税されますが、消費者等の場合は業者事務所所在の都道府県等において課税されます。
なお、いずれも納税義務者は卸売販売業者等です。
ゴルフ場利用税(間接税)
ゴルフ場利用税は、ゴルフ場の利用者に課す税金のことです。ただし、利用者が18歳未満及び70歳以上の場合は、免除されています。
ゴルフ場利用税は、各都道府県において税率を設定しており、標準税額800円、上限1200円とされており、最も安いのは埼玉県の一部のゴルフ場で300円です。
都道府県税として徴収した後は、その7割が市町村に交付税として交付されます。
軽油取引税(間接税)
軽油引取税は、特約業者又は元売業者からの軽油を引き取る場合に課す税金のことです。
特約業者とは、元売業者との販売契約に基づいて継続的に軽油の供給を受け、これを販売することを業とする者で、都道府県知事が指定した事業者のことを言います。
元売業者とは、軽油の製造業者、輸入業者又は販売業者で、総務大臣が指定した事業者のことを言います。
取引数量を課税標準として、1リットル当たり32.1円が課税されます。
自動車税(直接税)
自動車税は、自動車の所有者に課される税金のことです。
主たる定置場の所在する都道府県が、毎年4月1日現在の所有者に課税します。
また、自動車税は、自動車の種類と総排気量等によって定められています。また、環境に優しい、電気自動車やハイブリッド車等は減税となり、一定年数経過したガソリン車等には増税が実施されています。(グリーン化特例、環境性能割)
鉱区税(直接税)
鉱区税は、鉱区の鉱業権者い対して課される税金のことです。
鉱区面積を課税標準として、用途や目的に応じて税率が定められています。
固定資産税(超過分)(直接税)
固定資産税は、市町村税として徴収されますが、大規模償却資産のうち、市町村が課することができる上限を超えた場合は、超えた分を都道府県が課することができます。
上限は、地方自治法第252条の19において規定されており、人口によって区分され、人口5000人未満で5億円、人口20万人以上で40億円などと定められています。
法定外普通税
地方税法であらかじめ定められている普通税は、以上ですが、各地方公共団体において独自の普通税を設けることができます。
法定外普通税を設けるためには、上述のとおり総務大臣の同意が必要ですが、同意が得られなかったケースも存在します。
また、地方税法の趣旨を阻害するとして、最高裁判決により無効となったケースもあります。
目的税は全2種類+@
都道府県における目的税は、①狩猟税②水利利益税の全部で2種類規定されています。
なお、総務省と協議し同意を得ることで、各都道府県のオリジナル税を作ることも可能です。
(例:東京都等の宿泊税)
狩猟税(直接税)
狩猟税は、鳥獣の保護及び狩猟に関する行政の実施に要する費用に充てることを目的として、狩猟者の登録を受けるものに課す税金のことです。
税率は、狩猟方法と使用機器に区分して定められています。
水利地益税(直接税)
水利地益税は、水利に関する事業、都市計画法に基いて行う事業、林道に関する事業その他土地又は山林の利益となるべき事業の実施に要する費用に充てることを目的として、当該事業に因り特に利益を受ける土地又は家屋に対し、課す税金のことです。
なお、現在水利地益税が課されている都道府県は存在しません。