皆さんの自治体には、自治基本条例が制定されていますか?自治基本条例は、各地方公共団体における自治の基本理念や基本原則が規定されたものです。
自治基本条例は、北海道のニセコ町が平成12年に制定(施行は平成13年4月1日)した『まちづくり基本条例』をきっかけに各地方公共団体で設置する流れとなり、令和2年現在においては、全国の約400団体で制定されています。
条例の名称は、各地方公共団体によって異なり、『まちづくり基本条例』のほか、『まちづくり条例』『自治基本条例』『行政基本条例』など様々な名称で設置されていますので、皆さんも、ご自身が所属する自治体の例規集をご確認ください。
この記事では、地方公共団体の憲法ともいわれる自治基本条例が、どのような役割を果たしているのかを解説していきます。
実務で使用することがほとんどない条例だと思いますので、これをきっかけに興味を持っていただけたら幸いです。
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自治基本条例は地方公共団体の憲法?
日本国憲法は、難しい言い方をすると『日本の民主的変革の基本原理を提供する最高法規』です。日本国や日本人に関連する、立法も司法も行政も全て日本国憲法の元にありますし、人権を守っているのも日本国憲法です。
日本国憲法に反する法令の制定はできませんし、憲法を改正するには非常に大変な手続きを踏む必要があります。
一方、自治基本条例はどうでしょうか?各地方公共団体における自治の基本理念や基本原則を謳っているにも関わらず、憲法や法律はおろか、他の条例の上位に立つことすらできない一般条例に過ぎません。
これでは、意気込みを掲げるスローガンと変わりないものとなってしまいます。
憲法や地方自治法の焼き直し?(価値は内容次第)
そもそも自治基本条例を持つ地方公共団体は、全国で約400団体あるといってもまだまだ少数派です。多くの地方公共団体は、自治基本条例を持っていません。
自治基本条例を持たないことにより不都合が出るのであれば、各地方公共団体において必ず制定するはずですが、制定が進んでいないところを見ると、必置性はないと考えるべきでしょう。
なぜ基本理念や基本原則を規定するような、重要な条例がなくても不都合がでないのかといいますと、そもそも日本国憲法や地方自治法において、地方自治の本旨が謳われており、住民自治と団体自治を原則として運営されているためです。
では、自治基本条例が全く意味のないものなのかと言えばそうではなく、価値のある内容にすることが重要です。
形式的なものは憲法や自治法で十分カバーできているため、具体的な運営方針や仕組み、役割、責務等を明確に規定することにより、自治を活発化させることができます。
法律上他の条例に優越しない自治基本条例も、最高条例であり侵すことのできない条例であると皆が認識すれば、特別な価値を持つことができるでしょう。
自治基本条例で何を規定する?
自治基本条例は、法律の要請によって設置しているわけではなく各地方公共団体が自主的に設置しているため、必ず規定しないといけない内容はありません。
したがって、各団体によってカラーが濃くでますが、次のような規定を置いているところが多く見受けられます。
形式的にとらわれるのではなく、必要な内容を『行政・議会・住民等』でしっかりと協議した上で規定することによって、自治基本条例が尊いものとなるでしょう。
自治基本条例に価値を
自治基本条例は、法律上は条例の1つに過ぎませんが、制定するまでのプロセスや内容次第では、自治を活性化することに役立ちます。
社会は団体の時代から個人の時代となり、個性が求められていますが、団体としての個性を持つのに自治基本条例を活用してみてはいかがでしょうか?
例えば、『まちの全域でwifi環境が誰でも無料で使用できるGIGAシティ』、『CO2を30%削減するための環境保全フロントシティ』、『街中を漫画やアニメで埋め尽くすサブカルチャーメインシティ』のようなぶっとんだ政策を自治基本条例の目玉にすると注目を浴びること間違いないと思います。
少なくとも、ゲーム規制条例のようなものを制定するより前向きで面白いですよね。
このように、一見価値がないようにさえ思えてしまう自治基本条例も、形式的ではなく個性を持った具体的な内容を、しっかりと協議した上で制定することにより、価値のあるものに変化するのではないでしょうか。
自治基本条例を中心として、皆さんの地方公共団体の自治が活性化することを祈ります。