令和2年10月15日(木)郵便局正規職員と非常勤職員の格差訴訟において、違法の判決がなされました。
今回違法とされた格差は、『扶養手当、年末年始勤務手当、休日手当、病気休暇(有給)、盆・年末年始休暇(有給)』の5つです。
郵便局は、民営化により民間企業の位置付けとなりましたので、現在は公務員ではありません。
しかし、今回の非正規職員の待遇改善については、1つの企業についてだけではなく、社会全般の課題であり、地方公共団体においても他人事ではないなと感じています。
特に、役所の中には数十年に渡って勤務している非常勤職員もおり、同様の訴訟が起こった場合の影響は計り知れないでしょう。
会計年度任用職員は、年度内(1年以内)の任用形態であり、継続が見込まれる雇用形態ではないから格差があっても大丈夫といったスタンスで構えていると、郵便局のような訴訟が起きてしまうかもしれません。
このためこの記事では、郵便局の格差訴訟から会計年度任用職員制度の運用について、学ばなければならないと思ったことを書いていきます。
私も、会計年度任用職員の待遇改善を願っているため、1人でも多くの人に伝われば良いなと思うところです。
郵便局職員の格差訴訟は契約社員が勝訴
日本郵便では、正規職員と非正規職員の割合が5:5程度であり、非正規職員は全国で約20万人います。
郵便局はどこの市町村にも存在するため、この影響力は非常に大きく、瞬く間に全国の隅々にまで知れ渡ります。
そうなった場合に、待遇に満足していない郵便局以外の非正規従業員は、どのような行動を取るでしょうか?
私には、郵便局の格差訴訟は始まりに過ぎず、全国の企業で待遇改善革命が起こるように思えて仕方がありません。
最高裁判所でこのような判断がされた以上は、各企業においてもセルフチェックが必要となります。
会計年度任用職員の格差は大丈夫?
この訴訟の影響を受けるのは、民間企業だけではありません。令和2年4月1日から改正地方公務員法が施行され、会計年度任用職員制度の運用が始まった各地方公共団体にも及ぶことでしょう。
会計年度任用職員については、期末手当が支給できるようになるなど、従来の非常勤職員よりは手厚い待遇ができるようになりましたが、正規職員には遠く及ばない状況が続いています。
給与の格差
会計年度任用職員の給与に一般的に生じている格差は、次のとおりです。
とても同じ待遇ですとは言えないですよね。ひどい自治体になると、期末手当を支給する代わりに、給料月額を下げて年収が上がらないように調整しているそうです。
休暇の格差
会計年度任用職員の休暇に一般的に生じている格差は、次のとおりです。
正規職員は最大で90日間病気休暇を取得しても給与が減額されませんが、会計年度任用職員は1日でも休んだら給与が減額されます。
民間企業も無給だろうというのは全く理由になりませんので、待遇の均衡を図る必要がありそうです。
会計年度任用職員制度の趣旨
そもそも会計年度任用職員制度は、臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件を確 保することが趣旨の制度です。
会計年度任用職員制度を導入する背景には、社会問題ともなった大きな課題がありました。それはいわゆる『官製ワーキングプア問題』です。
住民のために一生懸命働く非常勤公務員の給料が余りにも安く、貧困状態であることが問題とされてきました。
会計年度任用職員制度においては、適正な任用・勤務条件が求められるため、官製ワーキングプアの解消も当然に行われることと考えられてきましたが、総務省等から発信された待遇の標準的な水準は余りにも低いものでした。
これに倣った自治体も多いと思われるため、制度改正が行われたにも関わらず、現在も全国に官製ワーキングプアが溢れかえっているものと思われます。
会計年度任用職員の待遇改善を考える必要がある
今回の郵便局の格差訴訟を他人事と聞き流していてはいけません。全国に20万人の該当者がいるのですから、世論が動いたと取るべきです。
日本では貧困の定義づけが曖昧であり、給与をいくら支払えばワーキングプアを脱出できるのかは不明ですが、合理的な理由がなければ、正規職員と待遇を分けるべきではありません。
各自治体においては、予算にも限りがあるため、敗訴でもしなければ急激に変化させることは難しいと思います。
しかし、会計年度任用職員の待遇改善は、必ず考えていかなければならない課題であるため、今回の最高裁判断を重く受け止めていただければ幸いです。