【初心者向け】地方公務員法をわかりやすく解説
2018.12.29
地方公務員法は、地方公務員にとって必ず理解していなければいけない法律の1つです。地方公務員法を理解せずに働いていると、知らず知らずのうちに違法行為を犯している場合があります。
法律に『知らなかった』は通用しません。故意でなくても懲戒処分を受けることがあります。きちんと勉強しない者が悪い、知っていて当然という考え方なのです。
あなたの配属先の上司が『親切+暇+優秀』であれば教えてくれるかもしれません。しかし、自治体に勤めている方は共感できると思いますが、日々の業務が忙しくてそれどころじゃないのが実態です。
このため、自分で学習する必要がありますが、地方公務員法の条文だけを読んでも、恐らく全く頭に入らないと思います。
そこで、各条文に簡単な情報を添えて、少しでもわかりやすく地方公務員法を解説していきますので、ぜひご覧ください。
第一章 総則(第一条ー第五条)
第一条(この法律の目的)
条文
(この法律の目的)
第一条 この法律は、地方公共団体の人事機関並びに地方公務員の任用、人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、休業、分限及び懲戒、服務、退職管理、研修、福祉及び利益の保護並びに団体等人事行政に関する根本基準を確立することにより、地方公共団体の行政の民主的かつ能率的な運営並びに特定地方独立行政法人の事務及び事業の確実な実施を保障し、もつて地方自治の本旨の実現に資することを目的とする。
用語
- 人事機関:任命権者、人事委員会及び公平委員会のこと。詳細は第二章で解説。
- 任用:採用、昇任、降任、転任のこと。詳細は第三章で解説。
- 人事評価:任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用するツールや制度。
- 分限:勤務実績の不良、心身の故障、不適正又は職制や定数改廃・予算減少による廃職や過員時等に職員の意に反して降任、免職、休職、降給させること
- 懲戒:非違行為に対する制裁的処分(懲罰)で、程度や情状により免職、停職、減給、戒告処分とすること。なお、訓告、厳重注意、口頭注意等は懲戒とは異なる
- 服務:法令等や上司の命令に従うこと、信用失墜行為の禁止、職務専念義務、政治的行為の禁止、争議行為等禁止、営利企業従事禁止等の義務のこと
- 退職管理:幹部職員等が利害関係のある営利企業に再就職することのないように管理すること
- (特定)地方独立行政法人:地方独立行政法人法第二条に規定。『住民の生活、地域社会及び地域経済の安定等の公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものと地方公共団体が認めるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律の定めるところにより地方公共団体が設立する法人』
- 地方自治:地方自治法第一条に規定。『地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。』
第一条は、地方公務員法を制定する目的について書かれています。
法律、条例、規則等を読むときには『目的・趣旨・定義』をはじめに確認するクセをつけてほしい。『この法律は、こんな目的でこんな趣旨が書かれているんだ!』という大筋がわかるだけでも、理解度が格段に変わります。また、定義がわからないと、誤って解釈する可能性が高くなります。
第二条(この法律の効力)
条文
(この法律の効力)
第二条 地方公務員(地方公共団体のすべての公務員をいう。)に関する従前の法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体のの定める規程の規定がこの法律の規定に抵触する場合には、この法律の規定が、優先する。
第二条は地方公務員法の効力について書かれています。
ここで書かれている効力は『地方公務員に関する条例や規則に書かれている中身が、地方公務員法に抵触する場合は、地方公務員の規定が優先されるよ』ということです。
このため、地方公務員に関する条例や規則を制定するときは、地方公務員法に矛盾しないようにしなければいけません。矛盾しないようにするためには、地方公務員法を熟知している必要があります。
第三条(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
条文
(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第三条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の全ての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。
2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。
3 特別職は、次に掲げる職とする。
一 就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職
一の二 地方公営企業の管理者及び企業団の企業長の職
二 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの
二の二 都道府県労働委員会の委員の職で常勤のもの
三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職(専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であつて、当該知識経験又は識見に基づき、助言、調査、診断その他総務省令で定める事務を行うものに限る。)
三の二 投票管理者、開票管理者、選挙長、選挙分会長、審査分会長、国民投票分会長、投票立会人、開票立会人、選挙立会人、審査分会立会人、国民投票分会立会人その他総務省令で定める者の職
四 地方公共団体の長、議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの
五 非常勤の消防団員及び水防団員の職
六 特定地方独立行政法人の役員
用語
- 一般職:特別職以外の全ての職
- 議会・議決:公選された議員によって、住民の意思を代表し、決定する合議制の機関のこと
- 地方公営企業:地方公共団体が、住民の福祉の増進を目的として設置し、経営する企業。提供する財貨又はサービスの対価である料金収入によって維持される。(例:水道局、病院局等)
- 労働委員会:労働者が団結することを擁護し、労働関係の公正な調整を図ることを目的として、労働組合法に基づき設置された機関で、①中央労働委員会(国の機関)と②都道府県労働委員会(都道府県の機関)の2種類が置かれている。労働委員会は、公益を代表する委員(公益委員)、労働者を代表する委員(労働者委員)、使用者を代表する委員(使用者委員)のそれぞれ同数によって組織する。
- 顧問・参与:行政に対して意見を述べたり勧告することにより、知識や経験を行政に生かす有識者のこと(非常勤特別職)
- 調査員:調査のために調査ごとに任命される者。代表的なのは国勢調査の統計調査員(非常勤特別職)
- 嘱託員:特別な学識・経験を持つ非常勤職員のこと。会計年度任用職員制度が実施されるまでは、事務補助員等もこの条文を根拠に採用されることが多く見受けられた。
第三条は、地方公務員が一般職と特別職について書かれています。
第2項において、一般職は特別職以外の全ての職と書かれていますので、どんな特別職があるのかを簡単に説明します。
特別職が書かれているのは第3項です。
- 第1号:公選(特別区長、知事、市長村長、議員等)、議会選挙(選管委員)、議会同意(副知事、副市長村長、教育長、監査委員等)
- 第1-2号:水道事業管理者、病院事業管理者等
第2〜6号は、条文記述のとおり。
第四条(この法律の適用を受ける地方公務員)
条文
(この法律の適用を受ける地方公務員)
第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。
第四条は、地方公務員法の適用を受ける地方公務員について書かれています。原則一般職に対してのみ適用し、特別の定めがある場合以外の場合は、特別職には効力が及ばないことを定めています。
ただし、特別職が一般職を兼ねる場合は、全面的に地方公務員法の適用を受けます。
第五条(人事委員会及び公平委員会並びに職員に関する条例の制定)
条文
(人事委員会及び公平委員会並びに職員に関する条例の制定)
第五条 地方公共団体は、法律に特別の定がある場合を除く外、この法律に定める根本基準に従い、条例で、人事委員会又は公平委員会の設置、職員に適用される基準の実施その他職員に関する事項について必要な規定を定めるものとする。但し、その条例は、この法律の精神に反するものであつてはならない。
2 第七条第一項又は第二項の規定により人事委員会を置く地方公共団体においては、前項の条例を制定し、又は改廃しようとするときは、当該地方公共団体の議会において、人事委員会の意見を聞かなければならない。
用語
- 公平委員会:人口15万人未満の市町村等に置かれる組織で、人事行政に関する権限を有する。詳細は、地方公務員法第8条で解説。
第五条は人事委員会、公平委員会、職員に関する条例の制定について書かれています。
この条文のポイントとしては、人事委員会が議会において意見を聞く必要があるのに対し、公平委員会についてはそのような規定はないところです。
人事委員会と公平委員会は、人口の多少で分けられた区分ではありますが、権限の有無に関しては、まるっきり異なる組織なのです。