国家賠償法は、地方公務員が不法行為をした場合に、住民が損害賠償請求をする根拠になっている法律です。
法律に『知らなかった』は通用しません。あなたの自治体が損害賠償請求されることのないよう、理解する必要があります。
そこで、国家賠償法についてわかりやすく解説していきますので、ぜひご覧ください。
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★地方公務員の国家賠償法に関する動画を作成しましたので、併せてご覧ください。
国家賠償法はどんな法律?
国家賠償制度の意義
国家賠償制度は、公務員の不法行為によって国民が損害を受けた場合に、国又は地方公共団体が代わって賠償する制度です。
国家賠償に関しては、憲法第17条に規定がありますが、これを具体的に規定したものが国家賠償法です。
法的性質(代位責任)
国家賠償制度は、公務員の不法行為を国又は地方公共団体が代わって賠償する制度であって、被害者が直接公務員に対して賠償責任を問うことはできません。(代位責任と呼ばれています。)
これは、直接公務員が賠償するとした場合に、次の2つの問題が生じるためです。
公務員への強い抑止力になり、公務に対して消極的になる恐れがある
公務員個人が賠償金を支払う財力がなく、被害者に対して十分な救済ができない恐れがある
民法との関係
不法行為による損害賠償は、民法709条に規定されており、国家賠償法は民法の特別法に当たります。このため、公務員の不法行為については、民法ではなく国家賠償法が適用されます。
ただし、国家賠償法第1条から第3条までに規定されていない事項については、民法の規定が適用されます。
例えば、損害賠償請求権の消滅時効は、民法第724条の規定が適用されることとなります。
外国人に対する適用(相互保障主義)
外国人が被害者場合は、相互保障がある場合に限って国家賠償請求が認められます。相互保障とは、当該外国人の国籍を有する外国が、日本人に対して国家賠償請求を認めている場合は、こちらも見てますよというものです。
公務員に対する求償権
被害者に対しては、国又は地方公共団体が賠償責任を負いますが、加害者である公務員が何も償わないわけではありません。
加害者である公務員に故意又は重過失があったときは、国又は地方公共団体は、求償権を行使することができます。
ここでいう求償権とは、国又は地方公共団体が賠償した金銭の一部又は全部を、加害者である公務員に請求する権利です。
しかし、求償権の行使はほとんど行われておらず、懲戒処分や刑事訴追が行われるのが一般的です。
国家賠償法における2つの責任
国家賠償法に基づいて行われる賠償責任については、ヒトとモノの2つに分けて規定されています。
公権力の行使に当たる公務員(1条責任・ヒト)
国又は地方公共団体が責任を負うのは、次の全てに該当する場合のみです。
公権力とは、行政・立法・司法の3権のことを指し、行使には作為のみでなく不作為も含まれます。また、公務員とは、一般職の公務員を指しだけでなく、特別職の公務員や、委託業者までもが含まれる点に注意が必要です。
職務を行うについてとは、行為の外形において職務執行を認めるべきもののされており、客観的に職務執行の外形を備えた行為であれば該当します。例えば、非番の警察官が制服制帽で強盗殺人を行ったケースも職務に当たると判定されています。
故意又は過失によってとは、故意はわざとという意味ですが、過失は、当該公務員の職種において要求される標準的な注意義務に反していることを指します。
違法に他人に損害を加えたときとは、法令違反だけでなく、客観的に公正を欠く行為等も含まれます。
加害者である公務員の行為が、上記の責任要件に全て合致する場合は、被害者は、当該国又は地方公共団体に損害賠償請求することができます。
なお、選任・監督している団体と費用負担している団体が異なる場合には、どちらに対しても損害賠償請求することができます。
公の営造物の設置又は管理(2条責任・モノ)
国又は地方公共団体が責任を負うのは、次の全てに該当する場合のみです。
公の営造物とは、公の目的に供されている物・施設・設備等のことで、動産か不動産かは問いません。また、自然公物(河川、海、池、沼等)と人工公物(道路、建物、公用車等)のどちらも該当します。なお、所有権が国又は地方公共団体である必要もありません。
設置又は道路に瑕疵があったためにとは、通常有すべき安全性を欠く状態であるかどうかが問われるのであって、設置や管理に過失があったかどうかは問われません。これを、無過失責任と呼びます。ただし、不可抗力によって発生した場合は、責任を負いません。
他人に損害を生じたときとは、財産に関わるものだけでなく、生命、健康、精神的損害も含まれます。
上記の責任要件に全て合致する公の営造物の設置又は管理の瑕疵によって損害を受けた場合は、国又は地方公共団体に対して、損害賠償請求することができます。
なお、設置・管理団体と費用負担している団体が異なる場合には、どちらに対しても損害賠償請求することができます。(当該公の営造物に対して、国が補助金を交付している場合は、国に賠償請求できる場合がある。)
国家賠償法全文
第一条
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
○2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
第二条
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
○2 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
第三条
第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
○2 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。
第四条
第四条 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。
第五条
第五条 国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。
第六条
第六条 この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。
附則
附 則 抄
○1 この法律は、公布の日から、これを施行する。
○6 この法律施行前の行為に基づく損害については、なお従前の例による。
国家賠償法は組織として身につけるべき
管理職になれば、部下の管理・監督、公物の設置・管理に対する義務が発生します。このため、国家賠償法は必要な知識と言って良いでしょう。
何かイベントを企画する際にも、この法律が頭に入っているのといないのとでは、注意できる範囲が変わってくることでしょう。
また、何か問題が起きた際にも、正しい対処をスピード感を持って実行できることと思います。
このため、部下や同僚に対しても、情報を広め、組織として国家賠償制度に対するリテラシーを高めていただければ幸いです。
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