解説

会計年度任用職員の服務について(解説)

会計年度任用職員制度の給与、勤務時間、休暇については、「臨時職員・嘱託員はどうなる?」の中で解説しましたが、このページでは会計年度任用職員が一般職であるために適用される服務について解説します。

一般職と特別職

一般職ってなに?という方もいると思います。

一般職は、特別職以外の全ての職のことを指します。(詳細は地方公務員法第三条を参照のこと。)

一般職と特別職で最も違う点は、地方公務員法の適用を受けるかどうかというところです。

地方公務員法のほとんどの規定は、特別職には適用されず、労働基準法等の別の法律の規定に従うこととなります。

このページでは、一般職である会計年度任用職員に対する地方公務員法の適用について解説していきます。

これを知らないと、違法となることもありますので、ぜひ御確認ください。

服務について

会計年度任用職員は一般職に定義づけされたため、服務に関する各規程が適用され、懲戒処分の対象となります。服務・懲戒に関する各規程は次のとおりです。

服務に関する義務を果たさない場合は、懲戒の対象となります。

1 服務の根本基準(新地方公務員法第30条)

第三十条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

⇒ 公務員としての自覚を持ち、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、全力で職務を遂行する必要があります。正規職員であろうと会計年度任用職員であろうと、同じ法律の適用を受けるため、全く同じ義務が発生します。

2 服務の宣誓(新地方公務員法第31条)

第三十一条 職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

⇒ 採用されたときに服務の宣誓をします。服務の宣誓をせずに職務に当たることはできません。

3 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(新地方公務員法第32条)

第三十二条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

⇒ 法令、条例、規則、規定等に従わなかった場合だけでなく上司の職務上の命令に従わない場合は、懲戒の対象となります。

4 信用失墜行為の禁止(新地方公務員法第33条)

第三十三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

⇒ 民法90条「公序良俗違反」のように、信用失墜行為も抽象的なもので、様々な事例について適用される場合があります。例えば、交通事故を起こした場合に、刑事罰・民事罰・行政罰の対象となりますが、このうちの行政罰として、懲戒処分となる可能性があります。交通事故を起こすという非違行為によって信用を失墜させたとみなされるわけです。

5 秘密を守る義務(新地方公務員法第34条)

第三十四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合においては、任命権者(退職者については、その退職した職又はこれに相当する職に係る任命権者)の許可を受けなければならない。

3 前項の許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。

⇒ いわゆる守秘義務です。退職後も守秘義務は付きまといますので、注意が必要です。

6 職務に専念する義務(新地方公務員法第35条)

第三十五条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

⇒ 休暇取得時や休日等の職務専念義務が免除されている場合を除いては、勤務時間の充てられているときは職務に専念する必要があります。副業を行うことは、職務専念を脅かす可能性があることからも禁止されています。

7 政治的行為の制限(新地方公務員法第36条)

第三十六条 職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。

2 職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市の区若しくは総合区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区若しくは総合区の所管区域)外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる。

一 公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。

二 署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。

三 寄附金その他の金品の募集に関与すること。

四 文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあつては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。

五 前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為

3 何人も前二項に規定する政治的行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、又は職員が前二項に規定する政治的行為をなし、若しくはなさないことに対する代償若しくは報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益若しくは不利益を与え、与えようと企て、若しくは約束してはならない。

4 職員は、前項に規定する違法な行為に応じなかつたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。

5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。

⇒ ①政党や政治団体の結成関与、役員就任、勧誘運動等を禁止しています。

②選挙や投票の投票するまたはしないように運動する、署名運動の企画・主催・積極関与、寄付金募集への関与、庁舎施設等への文書や図画の掲示等、その他条例に定める政治的行為を禁止しています。

①②のほか、公職選挙法においても地方公務員の政治的行為の制限が課せられています。

公職選挙法(全文)はこちら

8 争議行為等の禁止(新地方公務員法第37条)

第三十七条 職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

2 職員で前項の規定に違反する行為をしたものは、その行為の開始とともに、地方公共団体に対し、法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に基いて保有する任命上又は雇用上の権利をもつて対抗することができなくなるものとする。

⇒ ストライキ、サボタージュ等を禁止する規定です。公務員は労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)のうち団体行動権が認められていません。なお、警察、消防、海上保安、自衛隊、刑務所の職員には、三権全てが認められていません。

9 営利企業への従事等の制限(新地方公務員法第38条)

第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

⇒ フルタイム会計年度任用職員は、営利企業従事制限の対象ですが、パートタイム会計年度任用職員は対象外です。ただし、自治体によっては、営利企業従事する場合に届出を義務付けている場合がありますので、人事セクションの方に確認することをお勧めします。

終わりに

今まで臨時職員や嘱託職員(嘱託員)として勤務していた方は、地方公務員法上の服務規定は直接的に適用されていなかったので、知らないことも多いと思います。

しかし、平成32年4月1日からは待ったなしに適用されることとなりますので、基礎知識を身に付けておきましょう。

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