第二章 人事機関(第六条―第十二条)
第六条(任命権者)
条文
(任命権者)
第六条 地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員会、人事委員会及び公平委員会並びに警視総監、道府県警察本部長、市町村の消防長(特別区が連合して維持する消防の消防長を含む。)その他法令又は条例に基づく任命権者は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律並びにこれに基づく条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、それぞれ職員の任命、人事評価(任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう。以下同じ。)、休職、免職及び懲戒等を行う権限を有するものとする。
2 前項の任命権者は、同項に規定する権限の一部をその補助機関たる上級の地方公務員に委任することができる。
第六条は、任命権者の例示と、任命権者の権限、権限の一部の委任について書かれています。
委任については、全ての権限を委任できるわけではなく、他の法律等の定めにより委任できない事項もあります。
第七条(人事委員会又は公平委員会の設置)
条文
(人事委員会又は公平委員会の設置)
第七条 都道府県及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市は、条例で人事委員会を置くものとする。
2 前項の指定都市以外の市で人口(官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる人口調査の結果による人口をいう。以下同じ。)十五万以上のもの及び特別区は、条例で人事委員会又は公平委員会を置くものとする。
3 人口十五万未満の市、町、村及び地方公共団体の組合は、条例で公平委員会を置くものとする。
4 公平委員会を置く地方公共団体は、議会の議決を経て定める規約により、公平委員会を置く他の地方公共団体と共同して公平委員会を置き、又は他の地方公共団体の人事委員会に委託して次条第二項に規定する公平委員会の事務を処理させることができる。
第七条は、人事委員会又は公平委員会の設置について書かれています。
人事委員会と公平委員会のうち、どちらを設置するかは人口によることと定められています。15万人以上なら人事委員会、15万人未満なら公平委員会といった区分です。
また、第四項の規定により議決を経て他の地方公共団体と共同で公平委員会を置いたり、他の地方公共団体の人事委員会に委託することができることとされています。
第八条(人事委員会又は公平委員会の権限)
条文
(人事委員会又は公平委員会の権限)
第八条 人事委員会は、次に掲げる事務を処理する。
一 人事行政に関する事項について調査し、人事記録に関することを管理し、及びその他人事に関する統計報告を作成すること。
二 人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、研修、厚生福利制度その他職員に関する制度について絶えず研究を行い、その成果を地方公共団体の議会若しくは長又は任命権者に提出すること。
三 人事機関及び職員に関する条例の制定又は改廃に関し、地方公共団体の議会及び長に意見を申し出ること。
四 人事行政の運営に関し、任命権者に勧告すること。
五 給与、勤務時間その他の勤務条件に関し講ずべき措置について地方公共団体の議会及び長に勧告すること。
六 職員の競争試験及び選考並びにこれらに関する事務を行うこと。
七 削除
八 職員の給与がこの法律及びこれに基く条例に適合して行われることを確保するため必要な範囲において、職員に対する給与の支払を監理すること。
九 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
十 職員に対する不利益な処分についての審査請求に対する裁決をすること。
十一 前二号に掲げるものを除くほか、職員の苦情を処理すること。
十二 前各号に掲げるものを除く外、法律又は条例に基きその権限に属せしめられた事務
2 公平委員会は、次に掲げる事務を処理する。
一 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
二 職員に対する不利益な処分についての審査請求に対する裁決をすること。
三 前二号に掲げるものを除くほか、職員の苦情を処理すること。
四 前三号に掲げるものを除くほか、法律に基づきその権限に属せしめられた事務
3 人事委員会は、第一項第一号、第二号、第六号、第八号及び第十二号に掲げる事務で人事委員会規則で定めるものを当該地方公共団体の他の機関又は人事委員会の事務局長に委任することができる。
4 人事委員会又は公平委員会は、第一項第十一号又は第二項第三号に掲げる事務を委員又は事務局長に委任することができる。
5 人事委員会又は公平委員会は、法律又は条例に基づきその権限に属せしめられた事務に関し、人事委員会規則又は公平委員会規則を制定することができる。
6 人事委員会又は公平委員会は、法律又は条例に基くその権限の行使に関し必要があるときは、証人を喚問し、又は書類若しくはその写の提出を求めることができる。
7 人事委員会又は公平委員会は、人事行政に関する技術的及び専門的な知識、資料その他の便宜の授受のため、国若しくは他の地方公共団体の機関又は特定地方独立行政法人との間に協定を結ぶことができる。
8 第一項第九号及び第十号又は第二項第一号及び第二号の規定により人事委員会又は公平委員会に属せしめられた権限に基く人事委員会又は公平委員会の決定(判定を含む。)及び処分は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定める手続により、人事委員会又は公平委員会によつてのみ審査される。
9 前項の規定は、法律問題につき裁判所に出訴する権利に影響を及ぼすものではない。
第八条は、人事委員会と公平委員会の権限について書かれています。
具体的には、第一項は人事委員会の権限、第二項は公平委員会の権限、第三項は人事委員会の権限委任、第四項は人事委員会と公平委員会の権限委任、第五項は規則制定権限、第六項は証人喚問や書類提出に関する権限、第七項は協定締結権限、第八項は職員の給与・勤務時間等や不利益処分の単独審査権限、第九項は第八項の規程によって裁判所に出訴する権利に影響を及ぼさない旨が書かれています。
これを見ると、人事委員会の方がより多くの権限を持っていることがわかりますね。
第八条の二(抗告訴訟の取扱い)
条文
(抗告訴訟の取扱い)
第八条の二 人事委員会又は公平委員会は、人事委員会又は公平委員会の行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による地方公共団体を被告とする訴訟について、当該地方公共団体を代表する。
用語
- 抗告訴訟:行政事件訴訟法第三条に規定。『行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。』
第八条の二は、地方公共団体を被告とする抗告訴訟時に、人事委員会又は公平委員会が地方公共団体を代表することについて書いています。
人事委員会と公平委員会には、権限が付与されているだけでなく、抗告訴訟への対応が求められます。このため、処分等を行う場合には、より慎重な行動が取られています。
第九条(公平委員会の権限の特例等)
条文
(公平委員会の権限の特例等)
第九条 公平委員会を置く地方公共団体は、条例で定めるところにより、公平委員会が、第八条第二項各号に掲げる事務のほか、職員の競争試験及び選考並びにこれらに関する事務を行うこととすることができる。
2 前項の規定により同項に規定する事務を行うこととされた公平委員会(以下「競争試験等を行う公平委員会」という。)を置く地方公共団体に対する第七条第四項の規定の適用については、同項中「公平委員会を置く地方公共団体」とあるのは「競争試験等を行う公平委員会(第九条第二項に規定する競争試験等を行う公平委員会をいう。以下この項において同じ。)を置く地方公共団体」と、「、公平委員会」とあるのは「、競争試験等を行う公平委員会」と、「公平委員会を置き、又は他の地方公共団体の人事委員会に委託して次条第二項に規定する公平委員会の事務を処理させる」とあるのは「競争試験等を行う公平委員会を置く」とする。
3 競争試験等を行う公平委員会は、第一項に規定する事務で公平委員会規則で定めるものを当該地方公共団体の他の機関又は競争試験等を行う公平委員会の事務局長に委任することができる。
第九条は、公平委員会の権限の特例について書かれています。特例の内容は、条例で定めることにより、公平委員会が職員の競争試験・選考・事務を行えるようにできるものです。
第九条の二(人事委員会又は公平委員会の委員)
条文
(人事委員会又は公平委員会の委員)
第九条の二 人事委員会又は公平委員会は、三人の委員をもつて組織する。
2 委員は、人格が高潔で、地方自治の本旨及び民主的で能率的な事務の処理に理解があり、かつ、人事行政に関し識見を有する者のうちから、議会の同意を得て、地方公共団体の長が選任する。
3 第十六条第一号、第二号若しくは第四号のいずれかに該当する者又は第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者は、委員となることができない。
4 委員の選任については、そのうちの二人が、同一の政党に属する者となることとなつてはならない。
5 委員のうち二人以上が同一の政党に属することとなつた場合には、これらの者のうち一人を除く他の者は、地方公共団体の長が議会の同意を得て罷免するものとする。ただし、政党所属関係について異動のなかつた者を罷免することはできない。
6 地方公共団体の長は、委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき、又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めるときは、議会の同意を得て、これを罷免することができる。この場合においては、議会の常任委員会又は特別委員会において公聴会を開かなければならない。
7 委員は、前二項の規定による場合を除くほか、その意に反して罷免されることがない。
8 委員は、第十六条第一号、第三号又は第四号のいずれかに該当するに至つたときは、その職を失う。
9 委員は、地方公共団体の議会の議員及び当該地方公共団体の地方公務員(第七条第四項の規定により公平委員会の事務の処理の委託を受けた地方公共団体の人事委員会の委員については、他の地方公共団体に公平委員会の事務の処理を委託した地方公共団体の地方公務員を含む。)の職(執行機関の附属機関の委員その他の構成員の職を除く。)を兼ねることができない。
10 委員の任期は、四年とする。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
11 人事委員会の委員は、常勤又は非常勤とし、公平委員会の委員は、非常勤とする。
12 第三十条から第三十八条までの規定は常勤の人事委員会の委員の服務について、第三十条から第三十四条まで、第三十六条及び第三十七条の規定は非常勤の人事委員会の委員及び公平委員会の委員の服務について、それぞれ準用する。
第九条の二は、人事委員会と公平委員会の委員について書かれています。書かれている内容は『定数・適格・選任・罷免・任期・身分・服務等』です。
第十条(人事委員会又は公平委員会の委員長)
条文
(人事委員会又は公平委員会の委員長)
第十条 人事委員会又は公平委員会は、委員のうちから委員長を選挙しなければならない。
2 委員長は、委員会に関する事務を処理し、委員会を代表する。
3 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、委員長の指定する委員が、その職務を代理する。
第十条は、人事委員会と公平委員会の委員長について書かれています。
委員長は委員のうちから選挙で選ばれ、委員を代表して事務を処理します。委員長に事故があるときや欠けたときは、委員長の指定する委員が代わりに職務を執ります。
第十一条(人事委員会又は公平委員会の議事)
条文
(人事委員会又は公平委員会の議事)
第十一条 人事委員会又は公平委員会は、三人の委員が出席しなければ会議を開くことができない。
2 人事委員会又は公平委員会は、会議を開かなければ公務の運営又は職員の福祉若しくは利益の保護に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、前項の規定にかかわらず、二人の委員が出席すれば会議を開くことができる。
3 人事委員会又は公平委員会の議事は、出席委員の過半数で決する。
4 人事委員会又は公平委員会の議事は、議事録として記録して置かなければならない。
5 前各項に定めるものを除くほか、人事委員会又は公平委員会の議事に関し必要な事項は、人事委員会又は公平委員会が定める。
第十一条は、人事委員会又は公平委員会の議事について書かれています。
会議は、原則三人全員の出席が必要ですが、十分な理由があるときは二人の出席により会議を開くことができます。なお、委員の親族に関する事例であっても、十分な理由とは認められません。
また、会議の議事は出席委員の過半数で決し、必ず議事録を記録する必要があります。議事録に記録する事項については、人事委員会又は公平委員会が定めます。
第十二条(人事委員会及び公平委員会の事務局又は事務職員)
条文
(人事委員会及び公平委員会の事務局又は事務職員)
第十二条 人事委員会に事務局を置き、事務局に事務局長その他の事務職員を置く。
2 人事委員会は、第九条の二第九項の規定にかかわらず、委員に事務局長の職を兼ねさせることができる。
3 事務局長は、人事委員会の指揮監督を受け、事務局の局務を掌理する。
4 第七条第二項の規定により人事委員会を置く地方公共団体は、第一項の規定にかかわらず、事務局を置かないで事務職員を置くことができる。
5 公平委員会に、事務職員を置く。
6 競争試験等を行う公平委員会を置く地方公共団体は、前項の規定にかかわらず、事務局を置き、事務局に事務局長その他の事務職員を置くことができる。
7 第一項及び第四項又は前二項の事務職員は、人事委員会又は公平委員会がそれぞれ任免する。
8 第一項の事務局の組織は、人事委員会が定める。
9 第一項及び第四項から第六項までの事務職員の定数は、条例で定める。
10 第二項及び第三項の規定は第六項の事務局長について、第八項の規定は第六項の事務局について準用する。この場合において、第二項及び第三項中「人事委員会」とあるのは「競争試験等を行う公平委員会」と、第八項中「第一項の事務局」とあるのは「第六項の事務局」と、「人事委員会」とあるのは「競争試験等を行う公平委員会」と読み替えるものとする。
第十二条は、人事委員会と公平委員会の事務局と事務職員について書いています。
人事委員会には事務局を置き、事務局には事務局長(委員が兼ねることも可能)その他の職員を置くこととし、事務局長は人事委員会の指揮監督を受け事務局の局務を掌理することが定められています。
公平委員会(競争試験等を行う公平委員会は人事委員会同様の構成)には事務職員を置きます。
なお、事務職員の任免や組織については各委員会が定めますが、定数は条例で定めることとされています。
第三章 職員に適用される基準 第一節 通則(第十三条・第十四条)
第十三条(平等取扱の原則)
条文
(平等取扱いの原則)
第十三条 全て国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われなければならず、人種、信条、性別、社会的身分若しくは門地によつて、又は第十六条第四号に該当する場合を除くほか、政治的意見若しくは政治的所属関係によつて、差別されてはならない。
第十三条は、平等取扱いの原則について書かれています。
ここでいう国民に、外国の国民は含まれない。日本国籍を持たない者の任用は禁止されていないが、公権力の行使等を行う職(一部を除く管理職等)には任用できず、また、将来そうなることが予想される職についても任用できない。ただし、多重国籍者(日本+外国)は任用することが可能です。
例えば日本国籍を持たない物は、一般職員採用試験への受験資格は有するが、幹部候補職員採用試験への受験資格を要しないこととなります。
第十四条(情勢適応の原則)
条文
(情勢適応の原則)
第十四条 地方公共団体は、この法律に基いて定められた給与、勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように、随時、適当な措置を講じなければならない。
2 人事委員会は、随時、前項の規定により講ずべき措置について地方公共団体の議会及び長に勧告することができる。
第十四条は、情勢適応の原則について書かれています。
情勢適応の原則とは、『地方公務員の給与や勤務時間等の勤務条件が、国家公務員や民間人と比べて、適切かどうかを常に考えるという義務が地方公共団体にありますよ』というものです。
代表例としては、人事委員会の勧告や措置要求、公平委員会の措置等があります。この条文があることによって、常に勤務条件が情勢に適応しているのかを考慮しなくてはならないのです。