第七節 研修(第三十九条・第四十条)
第三十九条(研修)
条文
(研修)
第三十九条 職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 前項の研修は、任命権者が行うものとする。
3 地方公共団体は、研修の目標、研修に関する計画の指針となるべき事項その他研修に関する基本的な方針を定めるものとする。
4 人事委員会は、研修に関する計画の立案その他研修の方法について任命権者に勧告することができる。
第三十九条は、研修について書いています。
どこの自治体でも研修が行われているはずですが、単に人材育成のために行われているわけではなく、地方公務員法で義務付けられています。
研修が、業務として位置づけられたり、職務専念義務の免除を行うことができたりするのは、この規定があるためです。
第四十条 削除
第八節 福祉及び利益の保護(第四十一条―第五十一条の二) 第一款 厚生福利制度(第四十二条―第四十四条)
第四十一条(福祉及び利益の保護の根本基準)
条文
(福祉及び利益の保護の根本基準)
第四十一条 職員の福祉及び利益の保護は、適切であり、且つ、公正でなければならない。
第四十一条は、福祉及び利益の保護の根本基準について書いています。
職員の福祉及び利益の保護は、条例で定めることができる!
第四十二条(厚生制度)
条文
(厚生制度)
第四十二条 地方公共団体は、職員の保健、元気回復その他厚生に関する事項について計画を樹立し、これを実施しなければならない。
第四十二条は、厚生制度について書いています。
各自治体において、球技大会やボーリング大会のようなレクリエーションが開かれているのは、この規定によるものです。
これらのレクに参加する場合に、職務専念義務の免除を認めることは可能ですが、旅行命令を発して旅費を支給することはできません。
第四十三条(共済制度)
条文
(共済制度)
第四十三条 職員の病気、負傷、出産、休業、災害、退職、障害若しくは死亡又はその被扶養者の病気、負傷、出産、死亡若しくは災害に関して適切な給付を行なうための相互救済を目的とする共済制度が、実施されなければならない。
2 前項の共済制度には、職員が相当年限忠実に勤務して退職した場合又は公務に基づく病気若しくは負傷により退職し、若しくは死亡した場合におけるその者又はその遺族に対する退職年金に関する制度が含まれていなければならない。
3 前項の退職年金に関する制度は、退職又は死亡の時の条件を考慮して、本人及びその退職又は死亡の当時その者が直接扶養する者のその後における適当な生活の維持を図ることを目的とするものでなければならない。
4 第一項の共済制度については、国の制度との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
5 第一項の共済制度は、健全な保険数理を基礎として定めなければならない。
6 第一項の共済制度は、法律によつてこれを定める。
第四十三条は、共済制度について書いています。
共済制度は、職員と職員の被扶養者の万が一に備える制度で、地方公務員が安心して働くことができる基盤となります。
地方公務員の共済制度の内容は、国家公務員の共済制度と同程度の水準で、各自治体が定めます。
第六項にある法律とは、地方公務員等共済組合法のことを指します。
第四十四条 削除
第二款 公務災害補償(第四十五条)
第四十五条(公務災害補償)
条文
(公務災害補償)
第四十五条 職員が公務に因り死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、若しくは公務に因る負傷若しくは疾病により死亡し、若しくは障害の状態となり、又は船員である職員が公務に因り行方不明となつた場合においてその者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害は、補償されなければならない。
2 前項の規定による補償の迅速かつ公正な実施を確保するため必要な補償に関する制度が実施されなければならない。
3 前項の補償に関する制度には、次に掲げる事項が定められなければならない。
一 職員の公務上の負傷又は疾病に対する必要な療養又は療養の費用の負担に関する事項
二 職員の公務上の負傷又は疾病に起因する療養の期間又は船員である職員の公務による行方不明の期間におけるその職員の所得の喪失に対する補償に関する事項
三 職員の公務上の負傷又は疾病に起因して、永久に、又は長期に所得能力を害された場合におけるその職員の受ける損害に対する補償に関する事項
四 職員の公務上の負傷又は疾病に起因する死亡の場合におけるその遺族又は職員の死亡の当時その収入によつて生計を維持した者の受ける損害に対する補償に関する事項
4 第二項の補償に関する制度は、法律によつて定めるものとし、当該制度については、国の制度との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
第四十五条は、公務災害補償について書いています。。
公務災害は、民間企業でいうところの労働災害(労災)に当たります。
第四十五条に定められているほか、地方公務員災害補償法に詳細が定められています。
第三款 勤務条件に関する措置の要求(第四十六条―第四十八条)
第四十六条(勤務条件に関する措置の要求)
条文
(勤務条件に関する措置の要求)
第四十六条 職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる。
第四十六条は、勤務条件に関する措置の要求について書いています。
人事委員会又は公平委員会に対して措置要求をするのは職員(個人)であり、第四十六条を根拠として職員団体が措置要求をすることはできません。また、個々が共同して要求することは可能です。なお、退職者は職員には含まれませんので、措置要求をすることは不可能です。
措置要求は、待遇の改善を求めるものばかりではなく、現在の待遇を守るために、待遇の変更をしないでほしい旨の不作為要求をすることも可能です。
第四十六条は、措置要求に関するものであり、処分に対する不服申立ては第四十九条~五十一条の二に定められている審査請求制度によることとなります。
第四十七条(審査及び審査の結果執るべき措置)
条文
(審査及び審査の結果執るべき措置)
第四十七条 前条に規定する要求があったときは、人事委員会又は公平委員会は、事案について口頭審理その他の方法による審査を行い、事案を判定し、その結果に基いて、その権限に属する事項については、自らこれを実行し、その他の事項については、当該事項に関し権限を有する地方公共団体の機関に対し、必要な勧告をしなければならない。
第四十七条は、審査及び審査の結果執るべき措置について書いています。
措置要求の基本的な流れは、措置要求書を職員が人事委員会又は公平委員会に提出し、意見書・資料提出、陳述聴取、事実調査、証拠調べ等を経て判定することとなります。
審査の結果(判定)は①却下②棄却③認容の3形態あります。
- 却下:審議を行わず門前払いすること
- 棄却:審議の結果理由なしとすること
- 認容:必要な事項を実行または勧告すること
第四十八条(要求及び審査、判定の手続等)
条文
(要求及び審査、判定の手続等)
第四十八条 前二条の規定による要求及び審査、判定の手続並びに審査、判定の結果執るべき措置に関し必要な事項は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定めなければならない。
第四十八条は、要求及び審査、判定の手続等について書いています。
第四款 不利益処分に関する審査請求(第四十九条―第五十一条の二)
第四十九条(不利益処分に関する説明書の交付)
条文
(不利益処分に関する説明書の交付)
第四十九条 任命権者は、職員に対し、懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。
2 職員は、その意に反して不利益な処分を受けたと思うときは、任命権者に対し処分の事由を記載した説明書の交付を請求することができる。
3 前項の規定による請求を受けた任命権者は、その日から十五日以内に、同項の説明書を交付しなければならない。
4 第一項又は第二項の説明書には、当該処分につき、人事委員会又は公平委員会に対して審査請求をすることができる旨及び審査請求をすることができる期間を記載しなければならない。
第四十九条は、不利益処分に関する説明書の交付について書いています。
不利益処分をする場合は、説明書の交付義務がありますし、不利益処分を受けたと思うときは、任命権に対して説明書の交付を求めることができます。任命権者に不利益処分に係る説明義務を課すことで、権力濫用を防ぐこととなります。
ポイント
- 昇給の上り幅が想定より小さい若しくは全く上がらなかったとしても、基本的には不利益処分には該当しません。
- 処分説明書の不備があったとしても、処分の効力に影響はありません。
- 転任(異動)に関しては、任命権者からの一方的な命令行為(処分)ですが、不利益処分と認められる可能性は低いです。しかし、全く認められないものではありません。
第四十九条の二(審査請求)
条文
(審査請求)
第四十九条の二 前条第一項に規定する処分を受けた職員は、人事委員会又は公平委員会に対してのみ審査請求をすることができる。
2 前条第一項に規定する処分を除くほか、職員に対する処分については、審査請求をすることができない。職員がした申請に対する不作為についても、同様とする。
3 第一項に規定する審査請求については、行政不服審査法第二章の規定を適用しない。
第四十九条の二は、審査請求について書いています。
国民は、行政に対する不服申し立ての一般法である行政不服審査法に則り審査請求をすることとなりますが、地方公務員が不利益処分を受けた場合に行う審査請求は、第四十九条によることとなります。
第四十九条の三(審査請求期間)
条文
(審査請求期間)
第四十九条の三 前条第一項に規定する審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して三月以内にしなければならず、処分があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。
第四十九条の三は、審査請求期間について書いています。
行政不服審査法同様、処分があったことを知った日の翌日から3月以内、処分のあった日の翌日から1年以内が審査請求を行うことができる期間です。
第五十条(審査及び審査の結果執るべき措置)
条文
(審査及び審査の結果執るべき措置)
第五十条 第四十九条の二第一項に規定する審査請求を受理したときは、人事委員会又は公平委員会は、直ちにその事案を審査しなければならない。この場合において、処分を受けた職員から請求があつたときは、口頭審理を行わなければならない。口頭審理は、その職員から請求があつたときは、公開して行わなければならない。
2 人事委員会又は公平委員会は、必要があると認めるときは、当該審査請求に対する裁決を除き、審査に関する事務の一部を委員又は事務局長に委任することができる。
3 人事委員会又は公平委員会は、第一項に規定する審査の結果に基いて、その処分を承認し、修正し、又は取り消し、及び必要がある場合においては、任命権者にその職員の受けるべきであつた給与その他の給付を回復するため必要で且つ適切な措置をさせる等その職員がその処分によつて受けた不当な取扱を是正するための指示をしなければならない。
第五十条は、審査及び審査の結果執るべき措置について定められています。
人事委員会又は公平委員会の裁決の結果には形成力(審査請求の対象となった処分の効力を変動させる効力)があります。
第五十一条(審査請求の手続等)
条文
(審査請求の手続等)
第五十一条 審査請求の手続及び審査の結果執るべき措置に関し必要な事項は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定めなければならない。
第五十一条は、審査請求の手続等について書いています。
手続きや措置に関する必要事項は、各自治体における人事委員会規則又は公平委員会規則に委任されています。
第五十一条の二(審査請求と訴訟との関係)
条文
(審査請求と訴訟との関係)
第五十一条の二 第四十九条第一項に規定する処分であつて人事委員会又は公平委員会に対して審査請求をすることができるものの取消しの訴えは、審査請求に対する人事委員会又は公平委員会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。
第五十一条の二は、審査請求と訴訟との関係について書いています。
訴訟をする場合は、先に人事委員会又は公平委員会の裁決を経る必要があります。(審査請求前置主義)