このページでは、地方公務員の退職金について解説します。
まず、地方公務員法には、退職金を支給する旨の規定はありません。
しかし、国や民間企業同様に退職金を支給するため、給与(手当)の1つとして条例で定めています。
このため退職金は、退職手当という名称で支給されることとなります。
では、退職手当について、以下解説していきます。
関連記事:地方公務員の退職手当を計算してみよう!(退職後は?)
退職手当の算定要素
退職手当の算定に関係する要素は次の4つ!
① 退職時の給料月額
② 勤務年数
③ 退職事由
④ 職位又は級
退職手当の算定方法(概要)
退職手当は、次のような計算式で計算します。
退職手当=基本額+調整額
基本額=退職時の給料月額×支給割合×調整率(83.7%)
調整額=調整月額×月数
支給割合=勤務年数と退職事由から算定
調整月額=職位又は級で定められた額
月数=調整月額の大きい方から数えて最大60月分支給
※ 支給割合の最大は57月
※ 調整額は、定年4年以下は1/2、自己都合9年以下は1/2の規定有り
〇 給料表はこちらを参考にどうぞ
〇 支給割合 | ||
退職理由 | 年数 | 1年につき |
25年以上定年退職 | 1~10 | 150/100 |
11~25 | 165/100 | |
26~34 | 180/100 | |
35~ | 105/100 | |
25年未満定年・25年以上定年以外 | 1~10 | 100/100 |
11~15 | 110/100 | |
16~20 | 160/100 | |
21~25 | 200/100 | |
26~30 | 160/100 | |
31~ | 120/100 | |
20年未満自己都合 | 1~10 | 60/100 |
11~15 | 80/100 | |
16~19 | 90/100 |
✳調整額については、動画では10段階の自治体を想定して作成し、ブログでは9段階を想定して作成しています。
〇 調整月額表 | |
第1号区分 | 70,400円 |
第2号区分 | 65,000円 |
第3号区分 | 59,550円 |
第4号区分 | 54,150円 |
第5号区分 | 43,350円 |
第6号区分 | 32,500円 |
第7号区分 | 27,100円 |
第8号区分 | 21,700円 |
第9号区分 | 0円 |
〇 区分表 | |
第1号区分 | 1 行政職給料表8級 |
2 医療職給料表(1)5級 | |
3 警察職給料表9級 | |
第2号区分 | 1 行政職給料表7級 |
2 教育職給料表5級 | |
3 医療職給料表(1)4級 | |
4 消防職給料表7級 | |
5 警察職給料表8級 | |
第3号区分 | 1 医療職給料表(2)8級 |
2 医療職給料表(3)7級 | |
3 警察職給料表7級 | |
第4号区分 | 1 行政職給料表6級 |
2 教育職給料表4級 | |
3 医療職給料表(1)3級 | |
4 医療職給料表(2)6級又は7級 | |
5 医療職給料表(3)6級 | |
6 消防職給料表6級 | |
7 警察職給料表6級 | |
第5号区分 | 1 行政職給料表5級 |
2 教育職給料表3級 | |
3 医療職給料表(1)2級 | |
4 医療職給料表(2)5級 | |
5 医療職給料表(3)5級 | |
6 消防職給料表5級 | |
7 警察職給料表5級 | |
第6号区分 | 1 行政職給料表4級 |
2 医療職給料表(2)4級 | |
3 医療職給料表(3)4級 | |
4 消防職給料表4級 | |
5 警察職給料表4級 | |
第7号区分 | 1 行政職給料表3級 |
2 教育職給料表2級 | |
3 医療職給料表(1)1級 | |
4 医療職給料表(2)3級 | |
5 医療職給料表(3)3級 | |
6 消防職給料表3級 | |
5 警察職給料表3級 | |
第8号区分 | 第1号~第7号区分以外 |
退職手当の算定方法(概要)
モデルケース①
大学卒業後すぐに採用され、定年まで勤めて部長で退職した行政職の部長職員の場合
〇 経歴 | ||
S56.4.1 | 入庁 | |
H20.4.1 | 課長昇任 | 5-44 |
H26.3.31 | 課長 | 5-63 |
H27.4.1 | 次長昇任 | 6-39 |
H28.1.1 | 昇給 | 6-43 |
H29.1.1 | 昇給 | 6-47 |
H29.4.1 | 部長昇任 | 7-31 |
H30.1.1 | 昇給 | 7-31 |
H31.1.1 | 昇給 | 7-35 |
H31.3.31 | 部長退職 | 7-35 |
7級35号俸 給料月額460,000円 S56.4.1~H31.3.31 38年間勤務
25年以上定年退職のため、次の支給割合となる。
1~10年 150/100 × 10年 = 15月
11~25年 165/100 × 15年 = 24.75月
26~34年 180/100 × 9年 = 16.2月
35~38年 105/100 × 4年 = 4.2月
計 60.15月 >上限57月のため、57月
基本額 = 460,000 × 57 × 0.837 = 21,946,140
H29.4~H31.4 行政職給料表7級のため、第2号区分 24月
H27.4~H29.3 行政職給料表6級のため、第4号区分 36月
65,000 × 24 = 1,560,000
54,150 × 36 = 1,949,400
調整額 = 1,560,000 + 1,949,400 = 3,509,400
退職手当 = 21,946,140 + 3,509,400 = 25,455,540
頑張って部長まで昇りつめれたら2,500万円貰えます。
モデルケース②
モデルケース①同様に採用されたが、課長からの昇任せずに定年退職した場合
〇 経歴 | ||
S56.4.1 | 入庁 | |
H20.4.1 | 課長昇任 | 5-44 |
H27.1.1 | 昇給 | 5-72 |
H28.1.1 | 昇給 | 5-76 |
H29.1.1 | 昇給 | 5-80 |
H30.1.1 | 昇給 | 5-84 |
H31.1.1 | 昇給 | 5-88 |
H31.3.31 | 課長退職 | 5-88 |
5級88号俸 給料月額398,200円 S56.4.1~H31.3.31 38年間勤務
25年以上定年退職のため、次の支給割合となる。
1~10年 150/100 × 10年 = 15月
11~25年 165/100 × 15年 = 24.75月
26~34年 180/100 × 9年 = 16.2月
35~38年 105/100 × 4年 = 4.2月
計 60.15月 >上限57月のため、57月
基本額 = 398,200 × 57 × 0.837 = 18,997,723
H27.4~H31.4 行政職給料表5級のため、第5号区分 60月
43,350 × 60 = 2,601,000
調整額 = 2,601,000
退職手当 = 18,997,723 + 2,601,000 = 21,598,723
課長までは順調に昇任できても、課長止まりだと2,150万円程度となります。
最後の5年間で約350万円も差がつきましたね。
モデルケース③
高校卒業後すぐに採用され、転職のために自己都合退職した場合
〇 経歴 | ||
H26.4.1 | 入庁 | 1-10 |
H27.1.1 | 昇給 | 1-13 |
H28.1.1 | 昇給 | 1-17 |
H29.1.1 | 昇給 | 1-21 |
H30.1.1 | 昇給 | 1-25 |
H31.1.1 | 昇給 | 1-29 |
H31.3.31 | 係員退職 | 1-29 |
1級29号俸 給料月額165,200円 H26.4.1~H31.3.31 5年間勤務
20年未満自己都合退職のため、次の支給割合となる。
1~10年 60/100 × 5年 = 3月
計 3月
基本額 = 165,200 × 3 × 0.837 = 414,817
H27.4~H31.4 行政職給料表1級のため、第8号区分 60月
0 × 60 = 0
調整額 = 0
退職手当 = 414,817 + 0 = 414,817
5年間働いても50万円弱ですね。
日本の公務員制度の根底には、定年まで勤め上げるという概念がありますので、自己都合退職をする場合は、損をする形になります。
終わりに
退職手当について解説してきましたが、退職手当は各自治体の条例及び規則で定められていますので、必ずしも当サイトのとおりとはいきませんが、概要としてはこのような形です。
御自身の退職手当を計算したい場合は、自治体の例規から「給与条例」「退職手当条例」「調整額に関する規則」等の名称の例規を確認し、基本額と調整額を計算すれば退職手当額は算出できます。